FLOWERMOUNTAIN 『まくらもとノート』
 

パグのアリスがやってきた 後編

2022.09

約束の時間にシェルターを訪れると、代表のウチダさんが施設を案内し、どのような活動をされているかお話してくれた。シェルターにはたくさんの犬がいた。小さな子も、引き取り手を募集できないハンデのある子も、老犬もいた。節約をしながら、衛生的に、健康的に。献身的な活動に胸を打たれた。またペットを迎えるときがくれば、わたしたちはペットショップではなく、シェルターに行くと思う。

ウチダさんがわたしたちを椅子のあるトリミング室のようなところに案内してくれた。「お見合いですから、当日会うまでには当然シャンプーをしておめかしをさせます!」というお話しだったのだが、ウチダさんはわたしたちの待つ部屋にアリスを連れてきて、とても残念そうに言った。

じつは、この時のためにシャンプーをしてみたら、思っていたより肌の状態が悪かった。気付いてあげられなかった。すみませんが、このまま引き渡すわけにいかないけど、会うだけ会ってあげてください。と。 

アリスはおでこや脇腹、足などにハゲができて、肌が黒ずんで固くなっていた。足先の毛もだいぶ薄くなっていた。わたしの膝に乗ると、とても不安げで、緊張してまったく動かなかったけど、とにかくかわいかった。「なんて可愛いの!」と勝手に口が言っていた。 夫もとても優しい顔をして、いっしょにアリスを撫でた。なぜならこのアリスの「肌荒れ」が、わたしたち夫婦に「この子は家族だ」と確信させたのだ。

いぬやまは幼い時から肌荒れがひどかった。アレルギーがあって、良くなったり悪くなったりを繰り返した。肌の弱い犬種で、悪化してしまえばその治療は困難だ。はげしい抜け毛や独特の匂いやフケ、それによる部屋の汚れなども経験している。いいお医者さんも、いろんなお薬も、シャンプーも知っている。

だから、わたしたちは怯まなかった。怯まないじぶんたちが誇らしかった。これはいぬやまがくれた誇りだ。そしてきっと、いぬやまがくれた出会いだ。言葉には出さなかったけど、お互いにそう確信していた。

ウチダさんは、シェルターに来てくれるお医者さんの治療を受けさせる、どのくらいの期間がかかってしまうかわからないけど、良くなったら受け入れてあげてほしい、と言ってくれた。

夫は、幼い大切な時期だから、1日も早く家庭に受け入れたい。肌荒れについては理解しているし経験があるので、わたしたちで治療します。今日連れて帰りたい。と、きっぱりと言った。(もちろん直感を信じて、わたしと相談もせず) 

そうして、あれよあれよと言う間に、わたしたちは突然、アリスを連れて帰ることになった。

ウチダさんは「嫁入り道具」と称して、大きな段ボール2つに、おもちゃ・ベッド・お洋服・お皿、お散歩用ボトルやリードなどをいっぱいに詰め込んで、トイレシートも車に乗るだけくれた。これが今でも本当に助かっている。 アリスを送り出す準備をしてくれているウチダさんは本当に嬉しそうで、わたしも嬉しくなった。ウチダさんのこの想いが、わたしたちを繋げてくれたのだ。

それからわたしたちは、トライアル期間の1週間を待たずに、アリスの受け入れを表明した。

あれからもうすぐ2か月。アリスの肌荒れはとても良くなって、ハゲもほとんど目立たなくなってきた。黒ずんでいたおでこも毛が生えて、ビロードみたいにきれい。 さすがパグでおてんばだから、手こずることもたくさんあるけれど、できるだけゆっくり大人になってほしい。そう言いながら、顎や肘を噛まれて過ごしている。先住の動物たちは、迷惑そうにしているときもあるけど、遊びに誘ったりおちょくってみたり、お家の中が明るく・騒がしく、そしてとっても楽しくなった。

いっぱい笑って、いっぱい可愛がって、仲良く暮らしていきたいです。 

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略してフラマン。THE BAUM、NIGHT OWLのメンバー。

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