Ice Cream Studioのこと① THE BAUMとIce Cream Studio

2019.10.21

　Ice Cream Studioに行ってきた。

　Ice Cream Studioを利用する予定がキャンセルになった休日、ライブが近いバンドTHE BAUMのスタジオ練習に入って、せっかく皆集まってるし、スタジオのヨーン氏もあいているハズだし、行ってみない？と誘ったところ、一緒にきてくれることになった。
　キャンセルになっていたのがほんとうに残念だったから、ありがたかったし、うれしかった。

　寝起きのヨーン氏をひろって、渋滞に巻き込まれながら、へたくそナビゲーションに良DJでIce Cream Studioへ。
　到着時点で、居られて2〜3時間という感じだったんだけど、ヨーン氏が足場板の床をギシギシさせながらどこまで本当かわからない感じで「10曲いけます」とかなんとか言いながら、マイクや明かりをセッティングしてくれた。なんとなく話しているうちに、マイク1本で録ってみようという話になり、わたしたちはそうすることにした。
バラバラにしたソファみたいな椅子をちょうどよく動かして、半分向き合って半分マイクを向いて演奏した。ヨーン氏は一度セッティングして録音をはじめると、カメラを持って歩き回ってわたしたちを撮影してくれた。

　Ice Cream Studioは、倉庫の中にあるスタジオで、倉庫の扉を開けると、中にプレハブがあって、その上に足場で組んだスペースがあって、そこで演奏を録音してくれる。誰もが必ず憧れた、秘密基地の、本気のやつがそこにあって、きっと誰だってワクワクするだろうし、怖いからってハシゴを登らずに帰るひともそうそういないと思う。そこはほんとうなら誰にでもつくれて、でもほんとうには誰にもつくれないところ。

　大人になって「せーの」でやる機会はすごく減って、「せーの」してくれる仲間がいることや、「せーの」できる場所があるのって、わたしに楽しみをもたらしてくれて、とてもありがたいし、とても好き。そのひとかたまりを録ってもらえるのって、ほんとうにうれしい。
　大抵レコーディングをしようとなったときは、ついつい背伸びして、実力以上のものを残したくなるのだけど、Ice Cream Studioは例外。
　評価に価する作品を作っているとか、腕前が良いとか、上手だとかテクいとかそんなヤボなのじゃなくて、なぜやっているのか、のこたえになるような。THE BAUM楽しいな、この夜がすごく楽しかったんだ、こんな素敵な夜があった。それを、その「せーの」をまるごと持ち込めば、受け止めてくれるのが、Ice Cream Studioと、ヨーン氏なのである。

　ほんとうなら、自分たち以外にも聴いてもらおうと思ったら、できるだけきれいな音で、いつもよりていねいに、絶対に間違えないで録音しなくちゃいけないのかもしれない。でもそうなったときに、音楽はわたしの手の中から出て行ってしまう。もちろんそれも悪いことではない、ちゃんとした外向きの作品で、きちっと正装したわたしの音楽なのだけど。

　Ice Cream Studioには、ゼロの地点に戻れる何かがある。なんだってそうだけど、金にならないものを続けることや、感受性と向き合いながら歩くこともラクじゃない。手放したってフタをして生きられてしまうぶん余計に。世代が世代だから、音楽に、自然に自分にとっての付加価値をつけたがってしまう。そういうものだっていう、思い込みがある。外に向けたくなって、それにともなって苦しくなったり、何かを欠いたり。

　がんじがらめになっちゃったときは、解放しよう、じぶんの好きや、楽しいを。もっと信じよう、じぶんの好きや、楽しいを。

　わたしは最初のIce Cream Studioでのレコーディングで気づいたことで、楽しい音楽を取り戻せた。音楽とわたしの、ちょうどいい関係をみつけられた気がした。そのお話も、そのうち。

　とにかく、今回作ってもらった音源も、映像も、今のTHE BAUMの良いカンジそのものをまるごと収めてもらった、よいものになったと思います。ふらりと演奏され、記録されたものは、幸せな夜のようす、THE BAUMの実態です。

ありがとうございました。