FLOWERMOUNTAIN 『まくらもとノート』
 

パグのアリスがやってきた 中編

2022.09

里親募集サイトの「犬種」というプルダウンからパグを選んでみると、4匹ほどヒットした。その中に、車で迎えに行ける距離のパグの女の子「アリス」ちゃんがいた。生後10か月。写真が1枚だけ掲載されていた。

パグは緊張すると全身に力が入る。前足を突っ張って、お尻の方に体をグッと引く。耳もうしろにグッと引く。するとしわしわのおでこがツルッとなる。
1枚の写真を見ただけで、アリスは緊張した状態で両脇を抱えられ、台の上か何かに乗せられ、そのまま固まったポーズで写真撮影されたのがわかる。頭の中で、なんとも愛おしいパグの仕草が再生されたのだ。心理状態を読み取ることができて、アリスをとても身近に感じてしまった。

幼いパグの保護犬はめずらしい。応募も多いだろうし、里親には色々な条件が求められるので、お迎えできる可能性は低い。期待しすぎても、がっかりすることになるかもしれない。

夜遅く、わたしは夫に「パグの女の子の保護犬がいるの」と言って、アリスのページをひらいた、わたしのスマホを渡した。夫は「かわいい、いぬさんみたい」と言った。そして「応募してみる?」と言ってくれた。わたしは「よく考えなくちゃ」と言った。

わが家には先住の犬・猫もいる。みんなが快適に暮らせる関係ができるかどうか。犬1匹と猫2匹は、適度な距離感でバランス良く、とても静かに暮らしている。大騒ぎの幼いパグが加われば、調和は乱れるとまでは言わないが、新しいバランスを取っていく必要がある。共に過ごす時間の多いわたしにかかっている。
お金や時間の使い方、休日の過ごし方も大きく変わることになる。特に幼いうちはしつけやお世話が大変だ。

だけど、絶対に楽しくなるって。それはわかりきっている。

翌日はもう、ずっとずっと、アリスのことを考えていた。応募がたくさん来ているはずだ。家族が決まるかもしれない。それはそれでいいことだけど、そう思うとそわそわする。たまらなくなってその気持ちを、仕事中の夫にLINEで送った。夫はすぐに返事をくれた。

「応募してみよう。 縁があるかないかわかるから。応募してみて。」

わたしの人生。いつも最後に背中を押してくれるのは夫だ。わたしはすぐに応募フォームに記入をした。募集要項に「多頭飼いはおすすめしません」とあったのでダメもとだ。大人気ないことに少し迷ったが、ペットがすでに3匹いることを正直に書いた。迷う時点でもう、アリスを迎えたい気持ちが強いのだと感じた。まだ会ってもいないのにね。

翌日のお昼に、シェルターからお返事がきた。
すでにいるペットについて、犬種・性別・年齢などを質問してくれた。
パグの飼育経験があること、犬と猫1匹もパグと暮らした経験があること。聞かれてないけどお庭があること、夏はプールも出してることも書いた。とにかくわが家は楽しいのだ。どうか伝わりますように!その日のうちにお返事は来なかった。そもそも多頭飼いをおすすめしていないのだ。応募も多く、悩んでいるのだろう。この判断はもう、アリスを知っているシェルターの方にお任せするしかない。

翌朝早く、シェルターからお返事がきていた。わたしは大声を出しながら、すでに仕事をしている夫に、LINEでお返事の文面のコピペを送った。
「パグの気質を良くご存じですので、アリスにとりましては、ありがたいご縁ではないかと感じております。 譲渡に向けて、お話を進めさせていただきたいと希望しております。」

きたーーーーーーー!ご縁だ!ご縁だ!いぬやまの思し召しだ!
やはり多くの応募はあったけど、わたしたちがパグの気質を理解しているのと、シェルターの方自身が、うちの先住犬と同じペキニーズを飼育されていて、その気質を理解しており、大丈夫だろうと感じたところが大きかったらしい。すごい偶然だ…!

あまりにも急だったが、翌日は夫の仕事が休みだったので、早速会いにいってみることになった。シェルターの方でもなんとか面会の時間を作ってくれた。アリスはどんな子だろう?わたしたちを、気に入ってくれるかな。

後編につづく→ 

このページのトップへトップページへ
FLOWERMOUNTAIN

略してフラマン。THE BAUM、NIGHT OWLのメンバー。

Ⓒ2021 FURAMANMUSE
このサイトに掲載されている画像・文章など全ての無断使用・無断転載を禁止します